春香トゥルーエンドを、ニコニコのアイマスMADを通して全力で語る
先日のニコニコのランキングで見かけたこの手描きアイマスMADにグッときちゃったので全力で紹介!
本家アケ・360版のアイドルマスターでは、女の子をトップアイドルへ導き、引退コンサートを成功させたときトゥルーエンディングとなります。
その際春香以外のキャラクターとのトゥルーエンドはみな、そのアイドルとプロデューサーとの思いが結ばれる…という感じ。
しかし春香のトゥルーエンドの場合だけは、Pへの思いを打ち明ける春香をPが「春香の将来のため…」と答えて断るという展開になってしまいます。
上であげた動画は、そのシーンのやりとりを動画作成者のブラブラPが、自身のイラストとともに補完するというものです。
ちなみに原作でのPの受け答えに関して、私的にもPが少しそっけない印象が残ります。
それはゲームのシステム上、この後また別のアイドルのプロデューサーとなる展開のための描写なのかも知れませんが…
でもそれじゃ春香にはあまりにも冷たいんじゃない!?
そんなモヤモヤを「そう!これだよ!」と晴らしてくれる、そんな動画でもあるなぁと思いました。
●鳩Pが示したトゥルーエンドのひとつと、その後
私はこの動画とは別に、春香トゥルーエンドを扱ったある動画を見ていました。
その動画がこれ。
吉田拓郎・中島みゆきが歌う「永遠の嘘をついてくれ」という歌にのせて、制作者・鳩Pによる春香エンドのひとつの姿が「提示」されます。*1
春香が本当のアイドル(偶像)になれたこと、そしてそれを選んだ春香に映る現実…
●現実に逃げたPの姿
さらに鳩Pは、再開を近いつつ「離れた」二人のその後を、3部作のシリーズ動画をもって描いていくのです。
これがその1部目。
ここでは3年がたって離れた二人の「今」、その二人が再会することへの布石が示されます。
この中で「Pは小鳥さんと婚約した」という驚きの展開があるのですが、一連の作品を作り終えた鳩Pの編集後記にその真意が書かれています。
空白の3年間、Pと春香の気持ちはすれ違ったまま過ぎていきます。
Pは、春香を超えるトップアイドルを育てたかった。
なによりも、春香に仕事のできる頼れる男だと思われたかった。しかし現実は厳しく、Pの育てるアイドルは人気を得ることはできなかったのです。
そして3人目のアイドルが花咲くことも無いまま引退するとき、Pは自分の無力さに気づきます。ささいな男のプライド・見栄から、トップアイドルの春香を避け続け、そして。。。
小鳥さんとの結婚は、夢が破れることの暗喩だったりします。
小鳥さんといえば、明確なビジュアルが与えられたキャラクターの中で唯一事務員という全くアイドルではない存在で、言わばアイマスの中で唯一のハッキリとした現実のキャラクターなのです。
「トップアイドルの春香と並べる男になる」という夢が破れたPは、小鳥さんという現実に身をゆだねた。
小鳥さんとの結婚を、鳩Pの言葉を受けて自分なりに解釈するならこんな感じです。
●「愛してる」という言葉の重み
ここでPは上の動画にて受けとった春香の手紙を読んで、現実に迎合して騙していた今までの自分を捨てます。
そして「愛してる」という「恐ろしい言葉」を、春香に伝えます。
それは小鳥さんを自覚せずとも騙して裏切った悪人である自分を認め、アイドルと元プロデューサーという二人の関係を越えて堂々と向き合うことになる、という点でも「恐ろしい言葉」だと思うのです。
それさえ言わずに本心をあしらって暮らしていけば、Pは大きな不自由も苦労も罪もない生活が送れたのでしょうから。*2
●春香の見つけた答え
ここで春香はその「愛してる」という言葉に対する答えを見つけ、引退コンサートのステージを終えました。
そしてもう一度橋の上へ戻った春香は、Pに向かって笑ってくれました。
編集後記には
春香にとって、何よりも好きな「歌」を届けたい相手が
ファンの「あなた」達から、誰よりも好きな「あなた」一人に変わったとき。
そのことに気づいたときはじめて、春香は幸せにアイドルを引退できるのではないでしょうか。
とあります。
この答えを見つけた春香は「みんなのアイドル」から、Pだけに歌を届けてくれる存在になってくれたのです。
●歌うということ
そしてグランドフィナーレ。
春香だけじゃなく、アイドルたちが私たちに歌を届けてくれること。
その思い・意味を和私たちに伝えて、このシリーズは幕は閉じます。
●自分が一番好きなアイマスMAD。
「永遠の嘘をついてくれ」は、今ままで見てきた数あるどんなアイマスMADよりも好きで、多分これからもこれ以上好きなアイマスMADなんてないんじゃないかという位です。
小鳥さんを傷つけた勝手な行いに、この動画に登場するPにはコメントでも「殴らせろ!」といったものや、自分も「Pめ、こいつは!」と思うことも多くありました。
しかし編集後記などでこのストーリーの真意を探っていくうち、どんどんこの作品で描かれる、人間同士の関係というものの複雑さ・悲しみ・そして喜びのトリコになっていきました。
同人もそうなんですが、こういう一つの「違う物語」を描くことも出来る二次創作の素晴らしさをこの動画で一番強く感じたようにも思います。
またゲームそのもののトゥルーエンドについてもファンからは賛否両論があるようで、ニコニコのプレイ動画のコメを見ていても
- 「これぞアイドルマスターたるED!」
- 「SPではこのEDをかえてくれええええええ」
というようなコメントがよく目につきます。
これに関して自分は、やはりこの動画シリーズに感銘を受けたこともあって前者と同じ意見を持っています。
「無個性」であるとか「普通すぎる」といった単語で語られてしまうことも多い春香ですが、このトゥルーエンドで「アイドルマスター」という作品を構成するキャラクターとして、春香は他の誰よりも重要で、自分としても思い入れの深いキャラだと思えるようになったのです。*3
●より深くこの作品に浸れる参考リンク。
鳩Pによる動画シリーズの編集後記。
動画だけでは伝わりにくかったストーリーの細かい部分の真意や、うごいていく二人の感情、この作品の完成までの経緯などが語られていて、これも含めてさらにこのシリーズの理解が深まると思います。
人が人を好くということ−『WHITE ALBUM』と、アイマスMADシリーズ『永遠の嘘をついてくれ』(Ver 1.2 (3/7最終改訂稿)) - 摂津堂テクスト/日記のような、何か
記事を書く際に見つけた、この動画シリーズについての考察が書かれているエントリ。
アイマスの他にギャルゲーの「WHITE ALBUM」、それぞれの曲の歌詞、といった様々な要素を織り交ぜて二人のやりとりを考察されています。