「スタジオジブリ・レイアウト展」で知った、アニメーターのもう一つの「スゴさ」



 
 数日前に、大阪の天保山サントリーミュージアムで行われていた
 「スタジオジブリ・レイアウト展
 に行ってました。

スタジオジブリ・レイアウト展
 
 「レイアウト」というのは、アニメーション製作のなかで描かれる映像作りの設計図のようなもの。
 ワンシーンの背景・キャラクターの線画が完成品に近い形に描かれ、またその絵の要素それぞれの映像手法の指示や、作画時のキャラや背景の動き、カラーの仕上げ方、カメラの撮影工程といった、映像を作るためのあらゆる指示が一枚の絵に示されます。
 
 わかりやすい解説は公式サイトにある解説マンガや、

2Dセルアニメーション映画のレイアウトとは?

 レイアウト展に際して用意されたミニ講座の文章を読むのがオススメですw
 
展覧会ミニ講座

(あと、ジブリ以外のレイアウトの扱いについてWikipediaの「レイアウト・システム」に詳しく記述されています)
 
 
 会場では「アルプスの少女ハイジ*1から最新作の「崖の上のポニョ」まで、宮崎駿高畑勲の両氏が関わった作品とスタジオジブリで製作されたほとんどの作品の製作の際に描かれたレイアウトの数々を見ることが出来ました。
 
 もちろんレイアウトは複製ものでなく、宮崎駿含む描き手たちによる正真正銘の直筆
 現場で使われたものがそのまま展示されています。
 
 原稿用紙には、描き直した部分のエンピツの消し跡や、所々ついているシワや折れ目。年数によって黄色く変色した、用紙をつなげるためのセロハンテープ…
 などなど、製作現場の空気感がプンプンと漂ってくるようなアトが見てとれます。
 こういうのを見ると本当に、「アニメーションは多くの人々の手作業によって作られているんだなぁ!」という実感が湧いてくるというか…!
 
 
 また、約1300点ものレイアウトが展示されていたそうですが、とくに「千と千尋の神隠し」でのレイアウトの展示は圧巻でした。
 天井までレイアウトがビッシリと掛けられていたり、観客がトンネルを抜けると「油屋の前に立ちすくむ千尋」というシーンのレイアウトが壁一面に拡大プリントされていたり…
 ここらへんはさすが、日本国内での映画興行成績第1位の「千と千尋」に見合う気合の入った展示ゾーンと言えるでしょうねw
  
  
 
 



 
 自分も「『レイアウト』というシステムがハイジで効果的な演出として発揮された」なんてのはどこかで聞いた事はあったのですが、実際のレイアウトというものを意識して見たことはありませんでした。
 研究書などで見かけてたとしても、さほど目に留めてなかった…みたいな感じかもー?
 
 この展覧会で実物をキチン見て驚いたんですが、その絵の精巧さはもちろんのこと、このレイアウトという原稿用紙一枚に描かれた絵と注釈に、すごい量の映像作りのための情報が詰まってるんですね。
 キャラクター・背景・画面・効果・その他諸々…描き手がイメージする、場面ごとに映る映像のあらゆる「動き」が、このレイアウトの中で設計されています。
 
 脚本・絵コンテで示された内容を、いかに具体的な素晴らしい映像に組み立てるか。
 組み立てるためには、絵の各所各所をどのように扱えばいいのか。*2
 絵をどう動かせばいいのか。
 どうカメラで撮ってもらえばいいのか…
 
 何から何までヒトの手によって描き出さなければいけないアニメーションにおいてクオリティの高い映像を作り出す人は、ここで練られるような「映像の設計力」みたいなモノが高いレベルで必要になるんだろうなぁ、なんて思います。
 
 もしジブリ映画の、アニメーション的に複雑なワンシーンを見て、その映像を作るためには何をどうすればそれが再現出来るか?と聞かれたとして…
 仮に現場で使われるアニメーションのあらゆる手法を知っていたとしても、それをどう組み立てればよいかを考えたとき、自分はすぐに頭がパンクしちゃうと思いますw
 
 
 単に絵が上手いとか、描く動きがスゴいとか、そういった部分とはまた違った側面から「アニメーターのスゴさ」を知った気がします。
 やっぱアニメってスゲー。

*1:初めて「レイアウト」がシステムとして導入されたとされる作品

*2:背景のどこまでを一枚絵として描き、アニメーションさせる背景はどこが良いか、など