実在人物のパロディジャンルを考える。

 またもカタログを読んでて思った事をつらつらと。
 実は自分、「やおい」や「百合」というジャンルがけっこう好きな人間です。
 といってもやおい作品はショタエロ同人くらいしかあまり触れたことがないし、百合も既存のアニメやマンガの女の子たちがキャイキャイしてる所を妄想するのが好きというレベル。どちらも実作品に触れたこと自体はあまりありません。
 ただ、触れたことがないというだけであって、その精神というか「好きと思う気持ち」がなんとなくわかる感じでしょうかね。

 これらのジャンルで既存のアニメやマンガでパロる場合って、通常のパロディやSSやエロパロを作るよりさらに上の妄想力が必要になってくると思うんですよね。
 原作自体にそういった描写がある場合はそうでもないでしょう。しかしそういった要素が表面的には表現されていない作品では「こういう台詞を言うってことは、このキャラはあのキャラをこう思ってるんだな」なんて感じで想像を膨らませていかなきゃいけないわけですから。

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 そしてこの「要求される妄想力」が一番試されるのは、実在人物を使ったやおいではないでしょうか。
 カタログを見る限り実在人物のパロディを行っているのはほぼ女性作家のやおいジャンルです。
 そして人物のジャンル分けも様々で、ミュージシャンやドラマ俳優といったイケメン比率の高いものは序の口で、スポーツ選手やお笑い芸人などのカッコいいと言える人物の比率が多いとは言えない業界、はては(三国無双などのゲームキャラに依存しない)歴史上の人物といった、実際の顔でさえあいまいな題材さえ腐女子の方々は自分の妄想を通して作品を作ってしまうわけです。

 さて、上にはしつこく「顔」について書きました。とくに注目して欲しいのが
 

 >カッコいいと言える人物の比率が多いとは言えない業界
 >実際の顔でさえあいまいな題材

 の部分です。

 僕がこういったジャンルについて一番興味深く思う部分が、腐女子のみなさんは実在人物パロディに関してその人の「顔」の良し悪しを全く左右しないことがある部分なのです。

 ジャニーズなどのカッコイイ人物に憧れて、その熱意を作品と言う形で昇華する姿は想像しやすいのです。
 しかし、上で囲ったようなジャンル(特にお笑い)の作品には、実際の人物は一般的に見てお世辞にもカッコイイとは言えない人たちが使われることも多いようです。

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 やおいや百合に必要なのは「高い妄想力」という風に書きましたが、それすなわち「それらのキャラという存在」に萌えているが故にイロイロと妄想が生まれることなのだと思います。

(はっきり言ってしまいますが…)顔の悪い人物でもやおいの題材に使われるということは、題材を選ぶ腐女子さんはその人物の「顔」ではなく「キャラクター性」に萌えていると言えます。
 たとえばお笑いでも、オリエンタルラジオキングコングといったイケメンな芸人だけが使われると思えばそうではなく、中にはわざわざ顔が良くないバナナマン千原兄弟を題材に使う人だっているのです。

 それはひとえに「そのコンビという存在が自分のやおい妄想心をくすぐる」から選ぶのでしょう。
 言ってしまえば腐女子さんは、その人が自分の萌えるキャラクター性である時点で顔の良し悪しといった表面的なものは超越してしまう妄想力の持ち主なわけです。

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 こういうことって、果たして男性作家には起こることなのでしょうか?
 例外はあると思いますが、少なくともコミケカタログを見る限り男性向けのそういったジャンル区分はありません。モーニング娘。などの美人やかわいい人物を題材としたものは結構あるとは思いますが*1やはり数は女性作家に比べて圧倒的に少ないです。

 さらには、森三中クワバタオハラといったブサイク要素のある女芸人を題材にした百合同人なんて一度も見た事はありません。ってか、あっても見たくねぇよ!
 やはり男オタクは二次元と三次元どちらに対しても、顔や体型といった表面的なトコロが良くない限り、萌えることなんて出来ない妄想力の低い人種なのでしょうか…?

 いや、ちょっと待って下さい。
 これまで書いたことに相反するように男性作家が圧倒的に多い(と思われる)独自の妄想系ジャンルがあります。
 それは「無機物萌え」です。
 「ふたば」などを中心に男性作家たちは「PCのOS」「乗り物」はては「国家」までも萌えの対象とし、擬人化を行ってきました。
 これらはもう顔とか体型とかそんな概念すら持たない無生物です。そこにあるのは、その物体の特徴や形、存在意義や他のものとの関係など。
 そういったもはや意思すら持たないモノに萌えを感じ取るのも、素材の表面的の良し悪しを超越して人物の存在に萌える腐女子の方々に匹敵する妄想力と言えるでしょう。
 この感覚もまた、女性の方々にはあまり理解されないものだと思われます。

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 なんてことをツラツラと考えてみたのですが、結局のところ「表面の良し悪しだけが萌えじゃない」「そんなモノすら超越してその題材を愛す事が出来るのがオタク」と言うことでしょうか。
 なぜ女性は実在の人物のパロディには寛大で、男は消極的なのか。逆に女性は無機物萌えが少ないのか。というような疑問はそれそれでとても難しいものになるでしょうね。

*1:師走の翁「シャイニング娘。」なんかがそうですね