女学生たちの活気とその内面をきらびやかに描く「純情クレイジーフルーツ」
BSマンガ夜話などにも出演している、マンガ家のいしかわじゅん氏の「漫画ノート」という評論集を読んでました。
- 作者: いしかわじゅん
- 出版社/メーカー: バジリコ
- 発売日: 2008/01/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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いしかわ氏ならではの描き手の感情に寄った率直な作品評論が、作品内の1コマと共にたくさん載っています。
全く知らない作品についてのページも、飄々としているようでサラっと確信をつきつめるよう文章から楽しく読めました。
●少女マンガには珍しい?線を重ねた黒髪の少女。
今回の記事のマンガというのは、この本で語られていた作品なんです。
少女マンガは詳しくないので作者も作品名も全く知らなかったんですが、「豪華で魅力的な絵」と評されていたこの作品の例図1コマを見て「あ〜、確かにイイ絵だなぁ」「この女の子かわええw」なんて思ったんですね。
それがこの1コマ
なんというか…
真ん中の女の子が、自分の思う「典型的な少女マンガの美少女」なカタにはまってないように思えて、気になったんですね。
自分の認識は全くズレてるかも知れませんが、少女マンガでメインの少女を描くときにこういった「線を重ねた、全体的に黒っぽくて整った髪」のキャラってあんまり描かれないと思うんですよ。
自分の中の典型的なイメージとしては、「少ない線を散らして、全体的に白っぽくフワっとした髪」が少女マンガの少女の髪型なんですよ。(左右の女の子なんかそうですね)
こういった感じの少女マンガのキャラクターって、珍しいんじゃないかなーっと。
●楽しい4人の女の子と、その内面が伝わってくる描写力
それ以降とにかく「この女の子が描かれてる作品が気になってしょうがねぇ!」という思いにとりつかれましたw
こうなったら…と、古本屋で探してまずは紹介されていたコマの巻を購入してきた次第。
- 作者: 松苗あけみ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1983/05
- メディア: 新書
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上記のように、とりつかれるようにこのマンガの存在について惹かれた理由はコマにあった「絵」です。
しかしちゃんと作品を1巻通して読んでみると、絵の美しさ・表現の豊かさはもちろん、キャラクターの活き活きと動かす語りの上手さや、内面・心情が伝わりやすい表現描写など、どれをとっても非常に完成度の高い作品だと思いました。*1
作品の内容は、ごく普通のいまどきの*2女子校に通う、メインキャラクター4人の女学生を中心にしたコメディ。
オトナの女の魅力を振りまくけど、実のトコロ恋には打たれ弱い?な実子
男っぽい背格好だけど、ちょっと気弱で4人の中では一番女の子らしい性格かもな沢渡くん*3
4人の中で一番可愛らしい容姿だけど、勝気な物言いも多いみよちゃん
そして、その絵柄が気になったキャラクターの桃苗。
ふっくら体型を気にしてるけど、食べ物には目がない性格。
基本的に学園コメディであり、この4人の女の子たちがキャイキャイと騒がしく学園生活を送る姿が、1話完結で描かれます。
話ごとに気ままな学園生活が楽しく描かれるのですが、そういったギャグ・ユーモアの下に、それぞれの女の子たちの夢や悩みに関わる要素をチラホラと忍ばしているのです。
ストーリー中にそれをふと感じ取った女の子たちが見せる、自分の中の感情。
松苗先生はそういった年頃の女の子の細かな内面を、美しい絵とどこか伝わりやすい構成でもって描写していて、とても心に響きます。
楽しいコメディ部分が展開されるなかで、その年ごろの「女の子」だけが抱く内面に触れる過程をきっちりと積み重ねていく、このストーリー構成力の高さ。
そしてそれが、読み手に深く伝わせる、鮮やかな絵や表現やコマ構成。
少女マンガを読み慣れていない自分でも、内面描写にかなり感情移入してしまいましたし、もちろん全体のコメディ部分も面白い。
これはいい少女マンガを見つけたなぁ。
考えてみれば「漫画ノート」に例図されていたコマが、桃苗さんを中心としたコマでよかったですw
あのコマの桃苗さんに惹かれてなかったら、本を探して買うまでにいかず、読み流しちゃうところだったかも。
しかしつくづく自分は、ふっくら体型の二次元少女が好きだなぁ。
うさくん先生の作品が好きっていうのも含めて、あのふっくらした少女特有のポテっとした肉感にたまんなく惹かれるんだよなー。
あとタイトルをググっていろいろまわってたら、こんな動画を見つけました。
おおっ、「マンガ夜話」でも取り上げられてたんだ純クレ!
やっぱり夏目さんの「夏目の目」は面白いなぁ。