メビウス展&杉浦茂展が開催された「京都マンガミュージアム」へ

 先日のGW最終日の水曜に、京都にある京都国際マンガミュージアムで行われたイベントに行ってきましたー!

京都国際マンガミュージアム


 一番の目当ては、この日に行われたメビウス×村田連爾 線が語る」という対談イベント。

 イベントの詳細はここから


 メビウス氏は世界的に有名なヨーロッパ圏のマンガ・バンデ・シネ(BD)作家で、その作品にはかの手塚治虫大友克洋宮崎駿も影響と敬意を感じたほど、とのこと。

 そんな人が、イラストレーターの村田連爾氏と対談して、しかもその場で二人がペン画を描いてみせるって内容なら行かざるをえませんw



 メビウス氏についてはマンガ研究所や評論本の中で、その名前と作品の図例を度々見た事はあったんですが、実際の作品やメビウス氏の詳細な経緯を知ったのは今回が初めて。


 もちろんこの対談と合わせて、本人自選によるメビウス作品の複製原画の展示もやっていたので、対談が始まる前に展示を鑑賞。

 64点もの作品が展示されていて、メビウスの絵の精巧なテクニックとセンス、そして「著名な作家に与えた影響」についても感じ取る事が出来たと思います。


 その中でもとくに興味深かったのは「アルザック」という冒険ファンタジー作品の一ページ。
 初めて見た瞬間「ああ、これはメーヴェにのるユパ様だなぁ」と思っちゃいましたw


 76年ごろの作品(!)ということですが、明らかに宮崎駿と「風の谷のナウシカ」に与えた影響を知れる作品でした。

 特に主人公が乗っていた飛行生物から足場へ飛び移るさまは、「ナウシカ」の終盤でトルメキア軍に乗っ取られそうになる船にユパ様が単身飛び移るポーズそのもの。

 空中でのマントの翻り方などからも、そのシーンがパシッと思い浮かぶほどですw


 ためしにWikipediaの「ナウシカ」の「他作品からの影響」の項を確認してみたところ

なかでもフランスの漫画家メビウス[37]の『アルザック』(1975年)には強い影響を受け「『ナウシカ』という作品は、明らかにメビウスに影響されつくられたものです。」と宮崎自身メビウスと対談した際に語っている。

 とありました。

 荒涼としたビジュアルの世界観はもとより、武器やコスチュームのデザインにも似通うところは多いですね。




 そして肝心の対談イベント。

 
 実際にイベント会場へ座るには先着順の整理券の確保が必要で、そんなことも確認しないで自分は開館から1時間後ごろに到着orz

 会場へ行ってみると、すでに整理券は配布終了のようでした。
こちらのブログによると、朝4時から整理券確保のために並んでた人たちもいたそうな!そりゃなくなってる罠w)


 「せっかく来たのに、見れないのかよー!?」と思ったそのとき!ミュージアムは愚かなる我を見放しはならなかったのだ!


 なんとありがたいことに、別の部屋に用意された液晶TVとスピーカーで、実際の会場で行われている対談をそのまま生中継するという救済策が用意されていたのです!


 た、助かったぁ! …ホンマ、京都マンガミュージアムの皆さんの優しさは、天井知らずやで…。


 そういった策がとられたようにこのイベント目当てで来た人はかなり多く、会場の250名はもちろん、救済策の小さな部屋にも50名前後くらいの人で溢れていましたねー。
 
 世界的に有名なマンガ家であるメビウス氏の来日ということはモチロン、一方の村田蓮爾氏は顔出しのイベントというのをあまりしないというお話もありました。

 今思えば、自分が思ってたよりもずっとレアで価値のあるイベントだったんだなーと。


 
 対談の内容としては「線を語る」というサブタイトル通り、双方の作品造りの時における姿勢や思考を主として、メビウス氏の詳しい経歴、双方が作品について受けた影響や感触などを語っていました。

 対談と平行して二人は手元に用意されていたスケッチブックにペンを走らせ、最後にその場で描いたペン画を披露。
 村田氏はシンボルイメージとも言えるボブカット少女の横顔、メビウス氏はさきほどの村田氏の絵を模した少女の顔に、横たわる女性、ためし書きのための奇怪な生物や老人の横顔を描いていました。


 描いている際の手元がモニターによって映し出されていましたが、双方とも迷いなく線を引いて絵が出来上がっていく映像は、二人の恐ろしいほどの「描く技術」を感じましたw
 もうマジックのレベルだよありゃ。



 このイベントとは別にもう一つ特別展が開催されていました。
 それがコレ。


 戦中戦後の日本マンガ黎明期から活躍したマンガ家、杉浦茂氏の特別展です。


 同時期のマンガと比べて一歩抜きん出た独特のポップさと曲線、そしてそれに反して緻密な劇画的背景を描き、可愛らしいキャラクターの中によく見るとグロテスクな怪物も出てきたりと、なんとも独特な作品群。

 そんな杉浦マンガの「ヘンテコ」を模したオブジェや、歴代作品の単行本。

 そして、その「ヘンテコ」な各要素が表れているマンガ原稿の展示が行われていました。


 杉浦茂という名前も、マンガの評論本などで度々目にする名前でしたが、これも載せられていた例図以外の作品を見た事がなかったんですよ。

 しかし総じてどの本にも、マンガ黎明期、そして後年の影響を語るうえで外せない一人…という感じでその線やセンスについて多く語られていました。

 しかし文章や少ない例図だけでは実感できなかった、そういった杉浦氏の「スゴさ」を、実作を見て初めて感じることが出来ましたよ〜。



 そして同時に展示されていたのが…

 杉浦氏の敬愛を示す作家・クリエイター150名が寄せた「トリビュートイラスト」!

 その数とともにネームバリューも圧巻ですw

青木俊直 赤井孝美 赤塚不二夫高井研一郎代筆] 朝倉世界一 アシタモ 芦辺拓 足立淳 吾妻ひでお※ あびゅうきょ 安西水丸 五十嵐幸吉 石井いさみ 石川球太 泉晴紀 板橋しゅうほう いとう耐 植木金矢 うゑださと士 植田まさし 上野顕太郎 うえやまとち うおりゃー大橋(よっちん) ウノ・カマキリ 榎本俊二 海老原優 F・M・ロッカー おさたけし おしぐちたかし おだ辰夫※ 小田悦望 御茶漬海苔 小野耕世※ 一峰大二 勝又進※ 香取正樹 唐沢なをき 河井克夫 川崎のぼる 川島よしお 木村直巳 久住昌之 倉田よしみ クリハラタカシ 呉智英※ こいでたく 高信太郎 こうの史代 後藤友香 コンタロウ 近藤ゆたか サエキけんぞう※ 佐伯俊男※ 逆柱いみり 坂本頼光 さくまあきら 桜井弘明 左近士諒 佐々木マキ※ 椎名かつゆき 汐見朝子 志賀公江 篠原ユキオ 島田虎之介 島本和彦 清水勲 下元克巳 スージー甘金※ SUEZEN すがやみつる 園田健一 高井研一郎 高取英 高室弓生 田川滋  竹熊健太郎 竹中らんこ タケヤマ・ノリヤ※ 竜巻竜次 たむらしげる※ ちばてつや 辻真先 土山しげる 手塚眞 東郷隆 トニーたけざき 富野由悠季 とり・みき 内記稔夫※ 永井豪 長崎さゆり 長谷邦夫※ 永野のりこ ながやす巧 永山薫 夏目房之介 野上武志 乃美康治 長谷川裕一 畑中純 花くまゆうさく 花村えい子 花輪和一 羽生生純 林静一 バロン吉元 ピエール・ラ・ポリス ひぐちきみこ ひさうちみちお 聖悠紀 ビッグ錠 ヒモトタロウ(阪本誠一) フー・スウィ・チン 藤原カムイ 古川タク belne 堀内満里子 牧野圭一 牧美也子 昌原光一 丸尾末広 三橋乙揶※ 南伸坊 みなもと太郎 三好銀 Moo.念平 村上知彦 村野守美 本秀康※ 森下裕美 森田拳次 矢代まさこ 安永知澄 安彦良和 柳原満月 やなせたかし 矢野健太郎 矢吹申彦※ 山川直人 山口千枝子 山崎浩 山科けいすけ 山根青鬼※ 山松ゆうきち 山本航暉 湯浅ヒトシ 湯浅学※ 横尾忠則 四方田犬彦※ 渡辺電機(株) 和田誠
(五十音順・敬称略)

※印の先生は、青林工藝舎『怪星ガイガー・八百八狸』(2006年)掲載のイラストを展示。その他はすべて本展のための描きおろし!


公式よりコピペ

 
 なんだこれは…たまげたなぁ。



 大家のマンガ家ははもちろん、ここ現在に近い位置から活躍するマンガ家、アニメ作家、評論家までズラリですよ!
 これだけの多くの著名な作家たちの手描き感溢れるイラストを一度に見られるだけでもスゴいことですw
 
 こういった展示もあることは事前に知らなかったので、なんとも嬉しい誤算というかw


 展示された額にはイラストともに、作家それぞれの杉浦マンガを読んだ時の思いや受けた影響が書かれていました。

 これも、杉浦茂作品が与える影響力の強さがうかがえて、実に興味深いですね。



 特に自分にとって大発見だったのが、アニメ監督の桜井弘明の寄せたイラスト。

 萌えオタでありその源泉が「デ・ジ・キャラット」である自分にとって、この名前はビビっときましたよ〜。

 
 そして描かれていたのは、「でじこ」でも特徴的だった、あの食べているときのヘニョヘニョ顔


 (イラストの中に「ものを食べるときの一番美味しそうな表情」という感じのコメントが書かれていましたw)


 「デ・ジ・キャラット」の中でキャラクターが何かを食べる時には大抵この、目が簡単に・口が横長・口の端が動く形になるんですよ。
 「でじこ」で初めてこれを見た時には「ヘンな崩し方だなーw」なんて思ってました。


 このイラストの横には、ミュージアムによる「杉浦茂のヘンテコな食べ方」みたいな解説文がありまして、なんと杉浦マンガでまさしくこの顔が描かれているコマが並べてあったんですよ〜。


(こんな顔)

 このヘニョヘニョな食べ方のモトネタは、この杉浦茂マンガにおける「食べるときの顔」だった!


 へ〜ぇ、こーれは個人的に大発見!w
 これが知れただけでも別途の特別展入場料払った価値があったよ!



 その当時から見ても、そして今見てもポップでサイケな杉浦キャラデザにすっかり魅了されましたw

 なので帰りに、実生活でも使えそうなのも踏まえて、杉浦茂キャラ大集合なデザインのクリアファイルを購入!


 う〜ん、なんというか昭和当時の紙のヌクモリティを感じれていいグッズだぜ…



 メビウス展に杉浦茂展と、GW最終日にふさわしい一日でした〜。

 GW中ヘンにダラダラしちまった分は取り返せたような気がします。(ォィ