革命と皮肉と爆発。「Vフォー・ヴェンデッタ」


 久々に大学の図書館で映画DVDを見ました。
 前より授業間隔の空かないカリキュラムになったせいか、新年度になってから図書館でDVD鑑賞したのはこれで初めてかも。

 そんなこんなで、見た作品はVフォー・ヴェンデッタ(米・独合作)

Vフォー・ヴェンデッタ [DVD]

Vフォー・ヴェンデッタ [DVD]

第三次世界大戦後、かつてのアメリカ合衆国が滅亡し、独裁者アダム・サトラーにより全体主義国家と化した英国。
11月4日の夜、国営放送BTNに勤務する女性イヴィー・ハモンドは、やむを得ない事情で夜間外出禁止令の外出禁止時刻に外出する。だが案の定、秘密警察ザ・フィンガーの警察官(フィンガーマン)に発見され強姦されそうになる。そこにガイ・フォークスの仮面を被る謎の男“V”が現れ、3人のフィンガーマンを殺して、イヴィーを救ったのだった。彼女はこの奇妙な男と徐々に関わりを持つようになる。
だが、Vは自分を怪物に変えた者達に血の報いを与えようとする復讐鬼であり、さらには現在の全体主義体制の転覆をも企むテロリストだった。

wikipediaより抜粋)


 原作はシリアスなアメコミ作者の巨匠、アラン・ムーアがストーリーを担当するアメリカンコミックス
 アメコミ原作であった事は映画の公開によって知って、「アメコミ原作なら見てみたいなー」なんて思いつつ今まで見ずじまいでしたorz


 ところが先日に大学の授業でこの「V・フォー・ヴェンデッタ」の冒頭シーンのみを鑑賞することがありまして!

 アメリカが滅亡したことでイギリスが全体主義に」という今じゃ考えられない世界観や、作品内のTVで国営放送のキャスターが発するボストン茶会事件の報いだ、アホメリカめ!」なんてブッとんだ演説番組。それにダークヒーローである"V"の皮肉たっぷりかつ華麗な口上と立ち回り。

 授業ではヒロインのイヴィーを助けたシーンまでしか見れなかったんですが、こんなビックリな冒頭見せられちゃ最後まで見たくなるってなもんですw




 途中までは「"V"の政府要人の暗殺にイヴィーが巻き込まれながら一緒に戦って行くのかなー」なんて思ってたんですが、いやいやそこはアラン・ムーアの代表作、そんな決して単純な筋書きではありませんでしたw

 基本的に物語は主人公のイヴィーや"V"を追う刑事の視点から描かれ、"V"の正体に迫る政府が過去に覆い隠した事件や、政府要人の過去の悪行などを次々と暴きながら、華麗に民衆全体を"V"の「理念」に引き込んでいきます。
 ここらへんの、一つ一つ「独裁政府」という巨大な組織の暗部を探っていき最後には革命へとつながる…という緻密な展開とラストの解法が気持ちいいですねー。

 また、中世のイングランドで実際に起こった火薬陰謀事件という出来事に作中のいろいろな要素がなぞらえられている所もリアリティを感じさせます。


 そしてやはり一番の魅力は"V"のキャラクター。
 超人的な能力で革命を目指す"V"が、決してスーパーヒーローのように「間違いなき正義」を行っているとは言えないキャラクターだと感じさせる所も、「体制からの革命」というシビアなテーマにおいて上手く描かれてるなぁと。新たな革命のために、仲間をも厳しく試すことも重要なシーンとして描かれますし。
 あくまで"V"は単純に「正義」なのではなく「理念」の基に動くのであり、その「理念」こそが勝つのだ、というメッセージが伝えられます。

 それと同時に皮肉屋であったり茶目っ気のあったりする所もあって、"V"はやっぱり魅力的でカコイイキャラクターです。
 建造物の破壊や暗殺などの制裁を与える直前のイヤミたっぷりに上手いこと言うジョークは爽快ですし、仮面のまま料理をして主人公に振舞ったり、憧れのヒーローになりきって一人剣術の訓練を行うシーンは、作戦を遂行するときの超人ぶりとは思えないほどの人間くささ。
 ただただシビアなだけでなく、こういった面も作中に垣間見せるところで、観ている方はより"V"に惹かれていきます。
 

 それに"V"の華麗な振る舞いがそのまま映したような、公的建造物の爆破シーンがスゲーのなんの!

 チャイコフスキーの『序曲1812』という曲*1のリズムに合わせて次々と爆発が起こり、プレートや彫像などの象徴的な部分がキッチリと個別に吹っ飛ばして画面に大アップw
 同時に爆破を祝すように豪華な花火まで打ち上がり、最後にはV印のトレードマークも…
 やってる事は重大な爆弾テロなのに、なんて華麗なことよ!
 BGMのスケールと爆発の興奮に花火の美しさ…がいっぺんに襲い掛かってきて、ただただ圧倒され作中の民衆と同じように空を見呆けるのみです。

 一度目の裁判所でも十分驚きましたが、それを2度目ではビッグベン全部を、時計盤まで綺麗に吹っ飛ばしたりしてもう!
 こんなに「爆発シーン」が具体的な印象に残る映画はまだ見たことがなかったですw


 ラストはちょっぴり超自然的というか、明確に答えが出ない含みを持たされるんですが、「体制と革命」を問う作品として観ている側へ解釈を任せるという感じ。
 アクションや爆破といったシーンできっちり娯楽として楽しめながらも、観た後にちょっとした新しい価値観みたいなのを考えさせられる。こういう映画いいなぁ〜。

 ニコニコのトレイラーのコメなどを見ていると「映画もうまくまとめられてていいけど、原作はもう神すぎるから」って感じに書かれているコメもあって、是非是非原作の方も読んでみたいと思います。
 
 そういやあ近所の古本市場で日本版のヤツをみかけたような…

*1:調べてみたらコーヒー「ジョージア」のCMのやつか!w(〜〜〜も上出来だ♪)