米人オタが伝えるアメリカOTAKU事情 「オタク・イン・USA」
そのタイトルで手が伸びて、表紙を見て「これは!」と思って読んでしまったのが、パトリック・マシアス著 町山智浩訳「オタク・イン・USA 愛と誤解のAnime輸入史」です。
- 作者: パトリック・マシアス,町山智浩
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2006/08/09
- メディア: 単行本
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この本はまず、著者パトリック・マシアスが少年の頃いかにオタク文化を愛するようになったかを紹介します。
そしてそのパトリック少年が現在に至るまでの間、アメリカにおけるオタク文化はどのように持ち込まれ、広まっていったのか。また、現在アメリカにおいてオタク文化はどのような形で楽しまれているのかを、軽いジョークもまじえた読みやすい文体で紹介しています。
私はまだ海外に一度も行ったことがないし、外国語も全く出来ないので、「同じオタク文化*1同志は海外にも沢山いる」という事は知っていても詳しい実態はよくわかりませんでした。
でも同じオタクの、まして海外という場所であっても情熱を持った彼らについて色々知りたいという思いもあったので、非常に面白かったです。
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この本の面白いところは著者自身の体験を交えた各項の文章から、当時の興奮や落胆といった感情がダイレクトに伝わってくるところです。
アメリカではもちろん日本産アニメは輸入品なので、20年くらい前の当時のファンがそれらの作品を楽しむには様々な苦労や受難があったようです。*2
そういったハードルを乗り越え奔走する海外オタク青年たちの姿はなんともアツい!
いかにオタク文化が当時の海外オタク青年には魅力的であったかと感じさせられます。
また前述のような「アメリカオタク文化史」だけでなく、現状のアメリカにおけるオタク文化についても様々な事象が解説されています。
同じオタク文化でも国の違いによりその受け取り方や発展する方向も違っていて、その差異は非常に興味深く感じました。
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○改悪の原因は、本場の人間が持つウヌボレ?
この本を読んで強く感じるのは、アメリカが「徹底したショービジネス大国」であるがゆえのファンの受難です。
本書の中で紹介される日本作品(特に70〜80年代の古い作品)は、アメリカのTVや劇場で一般へ公開される前にアメリカのスタッフの手によって大きな改変を加えられる事がとても多いのだそうです。
アマゾンの内容紹介にも載っていますが、「ウルトラセブン」が原作のリアル志向なSFドラマからお寒いジョーク連発のコメディドラマになり、「宇宙戦艦ヤマト」は作品中一番魅力あるキャラといってもよいデスラー総統がオカマキャラになっていたり…
こういった極端なものでなくても、アクションアニメなら生身の戦闘シーンにおいての暴力的なカットは一切排除されたりすることも多いそうで、*3一番の華となるシーンを徹底的に削除される様子は、自分がもしそうならと思うと読んでいて心が痛むというか…
こういった改変がなぜ成されてしまうのかは、国柄やアニメに対する認識の違いなど様々あるのでしょう。
そして私はそれと同時に、前述したように世界が認める「ショービジネス大国」であるアメリカのスタッフの自信からそのような事が起こるのでは?なんて思いました。
映像コンテンツに深く関わる人間が自分の才能に自信を持っている事はどの国の人間であっても同じだと思います。
さらにアメリカのスタッフは*4
「ショービズ本場の俺がアメリカ向けに手を加えるんだから間違いないんだよ」
という自信を持っていそうなイメージがあり、その自信(ヘタな人の場合はウヌボレ)ゆえに改悪に至ってしまうんじゃないのかなぁ…なんて勘ぐってしまうのです。
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海外オタク文化について今まで詳しく触れた事はなかったのですが、ファンだけが示せる生の感触が伝わってくるので、興味を持ったときにまず手に取りやすい入門書とも言えるのではないでしょうか。
ただ生の感触が伝わるような文章ですので、完全に楽しむには読む側にも常識程度のオタ知識*5が求められるでしょうね。
ようは「オタク文化好き→アメリカOTAKU事情も知りたい!」って人には絶対オススメなんですが、「アメリカと日本の関係について興味がある→日本のアニメという大衆娯楽とのつながりを…」という人には、ちょっとツラいかも?
とにかくアメリカOTAKU事情がわかりやすく解説されているこの本、同じオタクには是非読んで欲しい一冊だと思いました。