「萌えるアメリカ」で知った『MANGA』の過去と今
今日読み終えた本が「萌えるアメリカ 米国人はいかにしてMANGAを読むようになったか」。
以前「オタク・イン・USA」という本を読んで「アメリカへのオタク文化発信」についてある程度認識出来たので、次はこれでも…という感じで手にとってみた次第。
萌えるアメリカ 米国人はいかにしてMANGAを読むようになったか
- 作者: 堀淵清治
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2006/08/14
- メディア: 単行本
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タイトルは「萌えるアメリカ」とあるのですが、「萌え」に関する要素はあまり含まれていない感じ。*1
実際の内容は、アメリカで初めて日本マンガを専門に英語翻訳して売り出す出版社「ビズコミュニケーションズ」(現在はビズメディアという社名)を設立した堀淵清治という方とその会社についての自伝的なもの。
20年前、当時のアメリカで極々一部のマニアにしか知られていなかった日本マンガの出版事業を興し、どのように「MANGA」を広め・広まっていったか。
現在までの会社の成長や紆余曲折を、当時の体験をもとに記しています。
似たテーマである以前読んだ「オタク・イン・USA」はアメリカ人オタクによる「楽しむ側」の目線だったのですが、今回の本はMANGAを商売として「発信する側」の目線で描かれているので、「楽しむ側」とはまた違ったアメリカという国が見えてきます。
読んだ中で初めて知って驚いたのは、アメリカの出版流通形態の複雑さ。
日本では簡単にいうと「出版社→製本→取次会社→小売店等」というのが一般的な商業出版のルートです。
しかしアメリカの場合売る本の種類(雑誌・一般書籍・アメコミ式の刊行コミックス)によって流通形態はそれぞれ異なり、それに沿って取次会社や本の形などが決められ、それによってそれぞれの本が売られる店舗も基本的に「刊行コミックならコミックショップ」「単行本なら一般書店」「雑誌ならスーパーや駅のスタンドなど」という風に分けられてしまうそうなのです。
日本のように「どんな本でも取次会社へ」「本屋に行けば雑誌もマンガも買える」というシンプルな構造になっていないことも、アメコミが未だ「子供だけが読むもの」とされて広い層に発展しない要因でもあるのでしょう。
とにかく今回の本は全く知らなかった「アメリカの出版業事情」について初めて知るきっかけにもなります。
続いて興味深かったのが、過去から現在連載中まで含めた名作ジャンプマンガが満載の月刊MANGA雑誌、英語版「SHONEN JUMP(少年ジャンプ)」や、こちらも小学館・集英社・白泉社の名作少女マンガが連載されている月刊誌「SHOJO Beat(少女ビート)」といった、アメリカではじめて本格的に刊行されたMANGA雑誌について。
日本の大手出版社が協同でこれらの雑誌を発行するに至った経緯や、これに対するアメリカ人の若者たちの反応については、正に「世界へ定着していくマンガ」の現状を実感できてとても面白いですね。
またこの本には付録として、設立から2006年の8月までにビズコミュニケーションズで発売されたMANGAの刊行コミックスと単行本のタイトルと表紙画像が掲載されています。
設立して「カムイ外伝*2」「舞*3」「エリア88*4」という3作品からはじまり、以降180近く刊行された名作マンガのラインナップを見る事が出来るのです。
これらを見て驚いたのは、アメリカのMANGAファンは自分が思っていた以上に色んな作品を読むことが出来るんだなということ。
日本におけるアメコミを入手する敷居の高さから「誰もが知る名作」というような作品しか刊行されないイメージを持っていたのですが、それと同時に…いやむしろ積極的に「最近の話題作」や「日本でもマンガ好きの読者でないと知らないような作品」も翻訳・刊行されているなと感じました。
特に「コミック版R.O.D*5」や「美鳥の日々*6」、「セクシーボイスアンドロボ*7」といった作品も発売されているというのは、結構ビックリ。
また、「X エックス*8」「ぼくの地球を守って*9」といったテーマの深い少女マンガ系作品などもいくつかラインナップの中にありました。
これらはコマや描写である程度のマンガの「読み」を知っていないとわからない面も多いと思うのですが、そうはあってもキチンと刊行されているわけですね。
自分の中では今まで「へーん!いくらMANGAが人気だからって、まだまだアメリカの人は「ドラゴンボール」とか「犬夜叉」くらいしか読めないモンなんじゃないの〜。」ってな感じで、正直ナメてました!
しかしこのラインナップを見るに、アメリカ人MANGAファンの「マンガの読み」は明らかに深くなっていますね…。
ヘタな日本のマンガ好きよりよほど深く「読める」人もたくさんいそうです。
以前の「オタク・イン・USA」と今回の「萌えるアメリカ」で、かなり現在のアメリカのオタク文化事情について知ることが出来たと思いますね。
「マンガは売れなくなってきている」なんて囁かれている昨今の日本ですが、それならいっそ国内だけでなく海外の方面へももっともっと色んな形でマンガが広まっていけば、更に新たに刺激的な才能や作品に出会えることでしょう。
まだまだマンガは羽ばたく余地がたくさんある、ということをこの二冊通して感じます。