あずまんがリサイクルであずまきよひこ先生を振り返る

先日ブック○フにて「あずまんがリサイクル」という本をサルベージしたので紹介〜。

あずまんがリサイクル (Dengeki comics EX)

あずまんがリサイクル (Dengeki comics EX)

あずまんが」と言うわけで、もちろん作者は「あずまんが大王」や「よつばと!」のあずまきよひこ先生です。
先生がいわゆるマイナー作家だった時代に発表された作品を収録した作品集となっています。
(厳密には98年に発売された同様の内容の「あずまんが」という作品集を再編集して描き下ろしを加えたもの)

あずま先生は電撃大王で「あずまんが大王」を連載するまで、パイオニアLDCから発売されていたアニメのビデオのおまけマンガ・イラストを担当したり、アンソロジーコミックを担当したりといった執筆活動をしていたため、一部のマンガ・アニメファンの間で「二次創作専門」的なギャグマンガ作家として知られていたようです。

今回の本は「天地無用!」「プリティサミー」「バトルアスリーテス大運動会」のビデオの特典マンガ作品を中心に収録されています。これに収録されていないこの頃の作品は「あずまんが2」という続刊に収録されているそうなので、そちらも探してみようかなと。

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 実は収録作品の原作でキチンと知っているのは「大運動会」くらいのもので「天地」や「サミー」は主要なキャラと関係くらいしか知らなかったりします。(けどキャラの造形的に砂沙美ちゃん*1やりょーちゃん*2大好物大好きです)

 しかし、そういった予備知識がなくても楽しんで読めるのが「あずまんが」の良いトコロ。 各ページのはしっこにはストーリーやキャラ設定などの簡単な説明が書かれていてなおわかりやすい。
 またマンガ自体もシリーズ全てを見ていないと分からないような濃いネタを扱うことも少なく、キャラクター達の分かりやすい特徴をうまくあずま先生風に料理した感じです。ギャグのノリなどは「大王」や「よつばと!」と同じなのでそれらを読んだことがある人ならまったく知識がなくても楽しめるかと思います。

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 そして「大王」から入った私としてこの本のなにより楽しい所が、あずま先生の今の画風と昔の画風の差を楽しむこと。
 収録作品当時の98年の絵と、この本へ2001年に書き下ろされたイラストを見比べるとかなり違っていることがわかります。

 今のあずま先生は、丸みを帯びた線やアニメ的なテカり(目や髪の大きなハイライトなど)を抑えた塗りといった、素朴で誰もが親しみやすい感じの画風と言えるでしょう。(脚注:よつばを使った絵本まで描いてますし)こうした画風は自分が思うに「大王」の中盤くらい(2000年の中ごろ?)から定まったと思います。

 対してこの本の頃の画風は当時のどちらと言えばオタク向けなアニメを題材に執筆していたこともあって、90年後期ごろのテカりの効いた塗りや細かい線が鮮やかなアニメ絵。ひどく言えば一般人には「オタクくさい」と言われそうな画風と言えます。

 今と昔で一枚絵を比べると「同じ人が描いたとは思えない!」なんてほどではないでしょうが、やはり狙う層やジャンルは大きく違ってきそうですね。



 一方マンガの中でもそういった差異は少なからずありますが、小さいコマの時や崩した顔などは今とあまりかわりはありません。

 
 逆を言えばあずま先生のマンガの文法はこの頃からそれほど変わっていないとも言えるでしょう。(キレのいいネーム、日常から突然不条理な状況が起こる「静と動」なコマの使い方など。)
 あずま先生のこの作風は「大王」から知れ渡り、センセーショナルで新しいものとして「ぱにぽに」などの萌え系ショートギャグマンガがひとつのジャンルとして確立する根源になりました。
 しかし「大王」を連載する以前の、この本に収録されていた作品を描いていた時代から、あずま先生はこの作風でコアなアニメファンから支持を受けていたわけです。
 個人的に「萌え」という言葉が広まった時期と「大王」の連載時期は重なってる印象があり、「萌え」という感情が言葉として広く認識される以前から、美少女たちが織り成す「あずまんが」の世界はすでにあったというのは新たな発見でした。

 結局のトコロ、あずまんが」は昔も今も面白いんだということですねw

*1:作中のヒロイン、阿重霞の妹。ダントツの人気キャラ。なんせ家事が得意で活発少女で水色髪ツインテで中の人は横山知佐なんだから仕方ないね

*2:宇宙船に変身できる「天地!」のマスコット。もふもふした茶色い毛並みのウサギっぽい姿に私はメロメロです