編集部と作家が作ったジャンプの歴史 (まんが編集術)

 久々に図書館から本を借りて読み終わりました。
 今回読んだ本は「まんが編集術」(西村繁男

まんが編集術

まんが編集術

 「まんが編集術」というタイトルですが、マンガ誌編集のハウツー本というワケではありません。


 著者の西村繁男氏は、「週刊少年ジャンプ」の創刊から発行部数600万部となる1994年までの間に編集者・編集長として携わった人物。


 そしてそれぞれ異なる時代の「ジャンプ」をリアルタイムで読んでいた4人のインタビュアーが、その時々のジャンプ・マンガ雑誌業界の当時について西村氏にインタビューを行うという内容です。


 創刊から西村氏の退社までにヒットしたジャンプマンガを追いかけ、その作品について尋ねる。という章を中心に、他にもマンガ雑誌・マンガ編集者の実態や、マガジン・サンデーといったライバル雑誌についてなどの様々なインタビューも掲載されています。




 この本のおもしろいトコロは、創刊から600万部に至るまでのジャンプの連載作品が、どのように掲載されるに至ったか。そしてどのようにその連載を終わらせていったか。

 この実態が編集者・編集長として現場に携わっていた西村氏本人の口から語られていくことですね。


 創刊から94年までに掲載された作品は連載以外にも読みきりなど、それこそ膨大にあるのでそれら全てについて語られているわけではありませんが、それでも大ヒット作品ばかりでなく当時でも人気のあった作家の失敗作、当時新人だった今の人気作家が描いた実験作までかなりの数の作品・作家について言及がされています。

 とくにあまり語られる事のない「作家と編集者」という当時の現場の状況については、マンガ史に輝く多くの作家の現役バリバリであったときの心情や、その作家は編集者にとってどういう人物であったかを垣間見る事が出来ます。


 そのためインタビューのやりとりも、ヘタな遠慮がありません。

 作品を挙げていくインタビュアーは作品によって「読者としてジャンプになぜこんな作品がと思いましたが…」「地味なマンガだと思って結構続きましたが…」というような、当時の読者としてのダイレクトな感想も交えた質問を行います。

 そして西村氏も「この先生は原稿が遅くて…」「当時でも人気作家だった人の作品だけどあまり人気が出なくて…」といったように、現場で雑誌を作っていく立場の人間としての本音で答えています。



 まず「雑誌が売れる」ことが第一な人気マンガ週刊誌という大衆的な商品。
 そこでの連載作品に対する評価は、内容以外の様々な要素も含めた形で決定されるものであることも良くあるのでしょう。
 でも作家が自分の思うまま作品を描くだけでは生まれない名作も、また確かに存在する。

 この本のインタビューを通して、そんな「人気マンガ雑誌」と「マンガ家」との関係の一例を知ることが出来たように感じました。


 (著者である西村氏は他にも自伝などを出しているそうなので、そちらも機会があれば読んでみようかなと思います。)