あさりよしとおが描く「家庭的萌え」の説得力

 先日買って来た「るくるく」を読んでるんですが、普段クールなのに時々のお茶目な面を見せるるくが可愛すぎますねw

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 るくの魅力といえば先ほど書いた様な「普段クールでさりげなくかわいい一面を見せる」ところが大きいですが、もう一つ大きな魅力に「家庭的萌え」があると思います。



●「作業工程」にこそ萌えあり?

 特にるくの「家庭的萌え」は、一般的な萌えキャラが持つそれよりもずっと強く伝わってきます。

 きっとそれは、作者のあさり先生がるくの家庭的な行いをキッチリと描写することで、「るくは家庭的である」ということへの強い説得力を持たせているからです。


 たとえば、大抵の萌えキャラで描写される「家庭的キャラ」というのは家事の上手さを描くことで表されますが、よく使われるパターンとして

女「私、料理得意なんだ〜。お弁当作ってくるね」
(翌日)
女「じゃ〜ん!」
男「おいしい!でもちょっと作りすぎかなぁ…タハハ」

 
 なんてシーンがよくあると思います。

 もちろんこれで「このヒロインは家庭的な娘」という表明こそ出来てはいます。
 しかしこの場合は大抵、ヒロインが調理を行うシーンは工程の一部を小さいコマで見せたりして簡略化するか、もしくは全く描かれない場合が多いと思うのです。

 しかし「るくるく」ならこの場合、簡略化されがちな料理の調理工程こそをキッチリと描きます。

 「るくるく」はるくたち悪魔と主人公・六文との奇妙な生活を描くギャグマンガですが、一方でこういった料理シーンでは料理マンガ並みにちゃんと調理工程の描写をします。

 もしくはこういった詳しい工程の断片だけ六文に見せて「るくは可愛いけど悪魔だし…」と不安がらせたり*1して、実際は「なぁんだそういうことかw」というギャグも多いですね。


 (本当はシュークリームを大量に作るためだけど、もの凄く不安になる)

 他にも「るくるく」の中では料理に限らず洗濯や家庭菜園といったさまざまな家庭生活での場面をネタにしますね。

 こういった「詳しい作業の描写」と合わせて「悪魔が人間の生活をする」というシチュエーションからあらゆるそういった描写が何度も出てくることで、「家庭的萌え」の魅力を何度も見ることになり、ますまするくの魅力に惹かれていくことにもなります。




●あさり先生だから描ける、るくが「家庭的」である説得力

 このように、あらゆる家事の作業を細かく描写することでキャラクターの魅力を映し出していく手法。

 これは科学・工学・雑学と色んな方面の知識に豊富で、かつそれらをマンガとして描き起こしわかりやすく見せる技術を「まんがサイエンス」などで発揮する、あさりよしとお先生だからこそ描ける手法だと思います。


 また、るくが人間界の生活の中で自分の知らないコトに直面してそれを考える姿を見るのも「るくるく」という作品の楽しさですが、そういったるくの試行錯誤。
 それに先ほど書いたような「作業の断片だけ見せてサスペンスを生む」というパターン

 これらにしても、そのネタとなる対象の知識・構造・工程などを把握していなければ、それらを解体してギャグとなる視点を見つけ出し、ネタとしてストーリーを構築することも出来ないハズです。




●るくに「萌える」ことの要素

 多くの読者がるくに萌えるのは、もちろんあさり先生の描くるくの絶妙なデフォルメやデザイン、身体のやわらかなラインといった表面上のことから、クールでありながらときおり可愛い一面を見せるキャラクター描写も大きいでしょう。
 
 そういったるくの設定自体がるくに萌える要素であると同時に、今回の記事で書いたような「魅力的なるくの捉え方」…映画で例えるなら「いかにるくという存在を、魅力的にカメラで写していくか」といった部分も、我々がるくに萌える大きな部分ではないでしょうか。
 
 この「萌え」は、作者であるあさり先生の「マンガの上手さ」でもって更に強く感じられるのであり、決してデータベース的な記号や絵柄を用意するだけで感じ取ることは出来ないものなんだと思います。*2

*1:もしくはルミエルがそれを見て「悪魔の儀式だっ!」と大騒ぎしたり

*2:って、そもそもこれは人気のある萌えキャラと作品に共通して言えることだと思いますがw